・ジャンル:時代探偵小説
・長さ:単行本一冊
◆ まとめ
一行短評:時代劇を舞台にミステリをメタ的にパロった作品。
オススメ度:×
amazon.co.jp:股旅探偵 上州呪い村
「御蔵開けだぁ! 退いた退いたぁ!」
「荷車が通るぜ! お上の御用米だ! 通りを塞ぐんじゃねぇぞ!」
紺の法被を着けた宿場の若衆たちが大声を張り上げた。ガラガラと車軸を鳴らしながら、米俵を山積みんびした荷車が走っていく。前の梶棒には車引が三人、後ろには車を押す車力が二人がかりで荷車を操っている。街道の旅人は慌てて道の脇に避けた。通りの真ん中を、土埃を上げて、何台も何台も、荷車が走っていった。
◆ ポイントの引用(ネタバレあり)
・「骸は埋めたんだな? きっと確かだべな?」
・「モウリョウ様だ! モウリョウになった久右衛門様の仕業に違ぇねぇ!」
・「エドガー・アラン・ポーが推理小説の祖だとする考え方ですね。でもあたしは、ヴィドックの回顧録こそが、推理小説の元だったのではないかと思っておりますわ」「ノンフィクションの犯罪録ブームから派生して、フィクションとしての探偵小説が生まれたと?」
・「まるで地球外の幾何学の法則に則って描かれているみてぇだべ」
・文様を目で負っているだけで、否応なしに狂気の深淵を覗きこむことを強いられかねないような、人類の文明の根源を根こそぎ揺るがしかねない原書の恐怖にも似た、おそらくは人間の脳裏に焼き付けられた太古の恐怖、原子記憶とでも形容すべき単細胞のアメーバ生物が感じていたかもしれない恐怖の記憶を呼び覚ましかねないような──だんだん何を言っているのかわからなくなってきたけれども、そういうおぞましい形容詞を延々となんページにもわたって書き連ねることによってのみ表すことの可能なような、不可能なような、人類の言語をもってしては名状しがたい、狂気に満ちた幾何学文様だったのだ。
・恐ろしい。おぞましい。こんな地底世界で人知れず祀られている神とは、いったいどんな邪神であろうか。イアイア。
・この広間まで達して、いよいよSAN値が、じゃなかった正気を保っていられなくなった気配がした。
・ペタリ、ペタリという、謎の音が増えていく。
・背後で鈴の音が高鳴っている。名状しがたいものたちが一斉に殺到しようとしているようだ。
・他に考えようもあるまい。地球外の幾何学とか出てきたし。ほら、アレだよ。あの路線」
・「いや、その、コズミック・ホラーだから」「コズミックと言っとけばなんでも許されると思っとるんだべか?」
◆ 神話要素(ネタバレあり)
・ラヴクラフト文体のパロディ
・SAN値
・深きものどもっぽい描写
・コズミック・ホラー