・ジャンル:怪奇
・長さ:掌編
◆ まとめ
一行短評:ディープワンの女性を網で救って逃したら……というお話。深きものども譚。
オススメ度:△
掲載誌:クトゥルー10
イーノック・カンガーが住んでいたマサチューセッツの沿岸では、カンガーについてさまざまなことが噂され──声をひそめて用心深くほのめかされる話もあるほどだが──そすひて奇異なうわさ話がインスマス港の船乗りの口から広まったのは、カンガーがその港町からほんの数マイルはなれたファルコン岬に住んでいたからだ。ファルコン岬と呼ばれるようになったのは、渡りの季節になると、ぽつんと海に突き出たこの岬から、ハヤブサ、コチョウゲンボウ、そしてときにはシロハヤブサさえもが見られることによる。イーノック・カンガーは姿を消すまでこの岬で暮らしていた。死んだのかどうかはわからない。
◆ ポイントの引用(ネタバレあり)
・カンガーにまつわるうわさ話によれば、カンガーはカモメやアジサシ、風やうねる波、そして人間の目にとまることはないが、本土の泥沼や湿地にいるらしい未知の巨大両生類のくぐもった鳴き声に似た、異様な声を出すものとも、話をかわしていたという。
・カンガーは驚くべきものをその夜見たのだといった。ボートでインスマスの沖合一マイルのところにある悪魔の暗礁に行き、網を投げ入れて大量の魚とあるものをひきあげたのだが、あるものとは女でありながらも女にあらざるもので、人間のように話はしたものの、春に沼地で聞こえるような、フルートの音色をともなう喉にひっかかった蛙さながらの声でしゃべり、口は大きく裂けているにせよ、やさしい目つきをしていて、流れ落ちる長い髪の下には鰓のような裂け目があり、カンガーに助けてくれと懇願し、いつの日かカンガーが危険にさらされるようなことがあれば助けると約束したのだという。
・「人魚だ」一人の男がそういって笑った。「人魚なんかじゃねえ」イーノック・カンガーがいった。「足と手があったからな。けど、足にも手にも水かきがついていた。顔の皮膚はおれとおんなじみたいだったが、体は海の色をしてた」
・泳ぎさっていくときにはダゴンの讃歌をうたっていたらしいが、彼らの中にイーノック・カンガーの姿があって、他の者達と同様に全裸で歌っていたという。
◆ 神話要素(ネタバレあり)
・【名前だけ】インスマス、キングスポート、アーカム、ダニッチ
・悪魔の暗礁
・深きもの
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