2016年1月25日月曜日

恐怖の鐘(ヘンリー・カットナー)を読んでみた

 恐怖の鐘(ヘンリー・カットナー)
 
 ・ジャンル:怪奇
 ・長さ:短編
 
 
 まとめ
 
 一行短評:ズ・チェ・クォンの初出。鐘の音の恐怖といい蝕といい、ズ・チェ・クォンはもっと有名になっていい。
 オススメ度:
   
 
掲載誌:クトゥルー13
 
 
 出だし
 
 サン・ザヴィエル伝導本部の失われた鐘にまつわる不思議な事件によって、多大な好奇心がかきたてられた。百五十年以上も隠されたままになっていた鐘が発見されながら、たちまち打ち砕かれて、破片がひそかに産められたことについて、多くの者が不思議に思っている。鐘の驚くべき音色についてさまざまな伝説があるたえに、音楽家の多くが怒りの手紙を書いて、鐘を鳴らして音色を録音することもなく破壊した理由を尋ねた。
 実をいえば、鐘は鳴らされたのだ。その時起こった大変動が、破壊の直接の理由である。そしてサン・ザヴィエルを包み込んだ前例のない闇のなかに、邪悪な鐘が狂った召喚の音色を鳴り響かせているとき、ひとりの男が速やかな行動をとったからこそ、世界は救われたのだ。──私はためらいなくいうが、世界は混沌と破壊から救われたのである。
 
 
 ポイントの引用(ネタバレあり)
 
 ・「見つけたぞ」(中略)「もちろんサン・ザヴィエルの鐘だよ」
 ・「なんだって、ああ、ちょっt待ってくれ。ここにある。よく聞けよ。『ここに埋められたムツネ族の邪悪な鐘を何人も吊るすなかれ。夜の恐怖が新カリフォルニアにふたたび生じぬように』ムツネ族は鐘の鋳造に手を出したといわれてる」
 ・やがて異常なものを目にした──恐ろしいものだった。蟾蜍(ひきがえる)──灰色の太った醜い蟾蜍──だった。踏み分け道の脇にある岩のそばにうずくまり、ごつごつした岩に体をこすりつけていた。(中略)私は立ち尽くして、嫌悪を覚えながら岩を見た。岩の灰色の表面に悪臭を放つ白っぽい筋が何本もついていて、蟾蜍の眼球がずたずたになったものがこびりついていた。蟾蜍はつきだした目をわざと岩ですりつぶしたのだ。
 ・メキシコ人だった。黒無精髭の生えた顔に、恐怖とくもんがあらわれていた。(中略)目が二つともえぐりだされ、ぽっかり開いた黒い穴から血が流れだしていたからだった。
 ・「わからないんだ。ロス、君は目がおかしくないか」震えがわたしの体中を走った。「妙なんですよ。焼けるような、ちくちくするような感じがします。ここへ来る間、ずっと目をこすってました」
 ・「『インディオたちが邪悪な妖術を実践したので、わたしたちが鐘を吊るして鳴らすと、ムツネ族がズ・チェ・クォンと呼ぶ邪悪な魔物が山の地底の棲家から呼びだされ、わたしたちのなかに漆黒の闇と冷たい死をもたらした』(後略)」
 ・暗き沈黙のものが西の大洋の岸の地底に住まいする。隠された世界の他の星より到来した強大な旧支配者の一員ではない。このものこそ、最後の破滅、劫初の夜の不滅の空虚にして沈黙だからである。
 ・太陽が死に、生命が消え、星たちが暗くなるとき、彼のものが再び立ち上がり、支配地を広げる。生命や陽光とはいっさいかかわりがなく、深淵の闇と永遠の沈黙を好むがゆえである。しかしその時が来たる前に、彼のものを地表に呼び出すことは可能であり、西の大洋の岸に住む褐色の民が、はるか地底の彼のものが棲まうところに届く深い音色の音と古代の呪文によって、これをおこなう力を有している。
 ・彼のものは食の時に来ることもあり、名前をもたざるも、褐色の民はズシャコンとして知る。
 ・そして突然わたしは目が見えなくなった。
 ・何かが頬にあたり、手で触ってみると、暖かなねっとりした血が感じ取れた。
 ・きわめてゆっくりと、徐々に、サンザヴィエルから闇が消えていった。最初は真珠を思わせる乳白色の夜明けのようだった。やがて陽光の黄色の光が射し入り、最後に夏の明るい午後の輝きに包まれた。
 ・日食は午後二時十七分にはじまり、その数分後にわたしは異様な感じがしはじめたことに気づいた。
  
 
 神話要素(ネタバレあり)

 ・ズ・チェ・クォン
 ・イオドの書
 
 
 

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